ちょっとグロテスク?

4月11日の演奏会のプログラム作成の係りから、ハイドン交響曲第6番『朝』の解説を書くように頼まれた。僕の希望でやることになった曲だから、断るわけにはいかない。
僕がこの曲を知ったきっかけはなんだったろうか。ハイドン交響曲の中でも超有名な『ロンドン』や『軍隊』なんかに比べたら、『朝』の存在を知ったのはずっと最近のことだ。チェリスト鈴木秀美『ガット・カフェ』という著書の中でこの曲の魅力について語っていることは、以前ブログに書いた。『朝』を初めて聴いたのはその『ガット・カフェ』を読むよりも少し前だったと思う。今所属しているオケには、団長以下、ハイドン好きが多いから、その中の誰かに教えてもらったのがきっかけでCDを買って聴いたのだったか、もう記憶がはっきりしない。
『朝』には随所に弦楽器・木管楽器のソロや、ソロ同士の掛け合いが出てくる。それらはどれも一級品といえる出来栄えだけれども、特に2楽章のソロヴァイオリンと絡むチェロの旋律はうっとりするほど魅力的だ。後ろ(つまりファゴットの席)で聴いていると、僕もチェロが弾けたらなあ、と思わずにはいられない。でも、4楽章にはチェロの動きのやたらに速い技巧的な部分もあるので、この曲はチェロ弾きにとっては必ずしも大歓迎の曲ではないのかもしれない。
3楽章のトリオの部分は、まるまるファゴットのソロ。これを本番で完璧に吹ききるというのは、僕には難しい。超絶技巧を要するわけではないけれど、ステージの上では何かしらヘマをやらかすというのはいつものことだから… リードは柔らかくて反応のいいものを用意しないと、途中で口がへばってしまう。これから本番に向けては、リードをいい状態に持っていくことが最重要課題になるけれど、これがまた簡単なことではないのだ。
さて、プログラムにはこんな個人的な、言い訳みたいなことばかり書くわけには行かない。参考にしようと思って音楽之友社発行の『名曲事典』(属啓成著)を開いてみたら、『朝』の解説には後期の代表作よりやや少ない程度のスペースが割かれている。ハイドンの104曲の交響曲の中には、作曲年などごく簡単な記述しかない曲も少なくない。そんな中で、さほど知名度の高くない『朝』はしっかりと名曲として遇されていると言える。嬉しい。でも、次の記述はどうなんだろう。

第三楽章はファゴットによる多少グロテスクなトリオをもったメヌエット

僕は今まで吹きながら「グロテスク」と感じたことはなかったけれど、聴いている人にはそう聞こえているんだろうか。まあ、いずれにしろ良くも悪くもファゴットらしさがよく表れている旋律には違いない。『名曲事典』によると、ハイドン交響曲ファゴットを使ったのは『朝』が初めてだそうだが、楽器の特性をうまく生かしているという点はさすがハイドンだなあと思う。そうそう、フルートもオーボエも、その魅力を存分に聴かせてくれることを書き添えておかなくては。

ガット・カフェ―チェロと音楽をめぐる対話

ガット・カフェ―チェロと音楽をめぐる対話