材料はあるのだけれど…

 先週の話ですが、夏期休暇を使って久々に山らしい山に登ってきました。
 北アルプス常念岳
 この山の頂上を踏むのは二回目、前回は燕〜大天井〜常念〜蝶ケ岳という縦走でしたが、今回は一ノ沢コースを往復。天気と仲間に恵まれて、楽しい山歩きでした。


 常念小屋の箸袋


 常念小屋に着いたのが16時少し前、翌日が『俳句界』投句の締切日だったので、夕食までの時間を使って俳句を作ろうと思い、句帳と歳時記と缶ビールを持って、小屋の外に出ました。西日に輝く岩と這松の山肌、槍・穂高のシルエット…材料はいくらでもあるのですが、そう簡単に俳句になってくれないのはいつものこと。夕食後、部屋に戻ってからもあれこれ考えてはみたのですが、結局ほとんどできず。ああ、俳句って難しい。いや、僕の才能が無さ過ぎるのかな。

 常念には若い勇敢なクライマーを誘い寄せる岸壁や困難な沢はないが、その美しい形をもって、芸術家気質の人々を惹きつける。画家や写真家に、この山は多くの材料を提供してきた。その一例として、私は田淵行男さんの写真集『尾根道』を思い出す。田淵さんは常念岳のすぐ麓の牧村に住んで、この山を裏庭くらいに馴染み深くなった人である。「私の一番多く登っている山は、言うまでもなく常念、大滝である。回数にすると百をはるかに越えている」というのだから、その傾倒ぶりも尋常ではない。それだからして常念の表情を知悉しているような優れた写真が生まれるのだろう。深田久弥日本百名山』)

 百回以上も登れば、写真にしても俳句にしても、山はきっといい作品を授けてくれるんでしょうね。


 それにしても、小屋の前のベンチで涼しい風に吹かれながら飲んだ缶ビール、うまかったあ!
それから、小屋の外の星空、早朝の常念山頂からの眺め、どちらも最高でした。


『週刊俳句』最新号に、僕の駄文(『俳句界』2008年8月号を読む)が載っています。ここで取り上げた松山足羽という人の他の句を、ぜひ読んでみたいと思っています。