- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/01/01
- メディア: 新書
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僕はこの本が書店に並んでいるのを何度も目にしましたが、手に取ることはありませんでした。中高生向きに書かれた本で、しかも題が『先生はえらい』ですから、何だか説教じみたことが書いてありそうで、ましてやえらくない「先生」である自分にとっては大いに反省を強いられる本に違いないと決めつけていたのです。にもかかわらずこの本を買うことになった事情については前に書いた通りです。
筆者は、
・師弟関係というのは、基本的に美しい誤解に基づくものです。
・私たちが口にする「自分が思っていること」は、相手によって変わります。
・サッカーのボールは貨幣と同じ役割を果たしています。
・コミュニケーションでは、意志の疎通が簡単に成就しないように、いろいろ仕掛けがしてある、ということです。
などと奇を衒ったかのようなセンテンスを次々に繰り出してみせます。読者は、「え? それどういう事?」「それって反対じゃないの?」という疑問に引きずられて先へ先へと読み進むのですが、読めば次々に疑問は解決し、人間に対する(とりわけ「コミュニケーション」というものに対する)理解が深まって、賢い大人に一歩近づけたような満足感を味わうことができるはずです。(これって、読書の醍醐味の一つですよね。)
そして、最後に「先生はえらい」という題がどういう意味だったかのか、ちゃんと答えにたどり着く仕組みになっているのです。
中には読み終わって「結局なんだったの? ワケわかんなーい!」と思う人もいるかもしれませんが、それでもいいんだということも、この本の中に書いてあります。
もちろん、「先生」である僕には、この本に書いてあることはよく理解できましたよ、と言いたいところですが、あえてここではそう言わないでおきます。内田センセイとはこれを機会にぜひともお付き合いを続けたいと思っていますから…
恋人に向かって「キミのことをもっと理解したい」というのは愛の始まりを告げることばですけれど、「あなたって人が、よーくわかったわ」というのはたいてい別れのときに言うことばです。