ハン大人の王子

1学期に『ミラクル』『木を植えた男』と続けて読んできた外国人生徒二人と、2学期は何を読もうかいろいろ考えましたが、星の王子さまがあるじゃないか、と思いつきました。なにしろ世界中で読まれている名作なんだから…
と言っても、実は僕自身読んだことがなかったので、倉橋由美子の「新訳」を、ところどころ内藤濯訳と池澤夏樹訳のと比べながら読んでみました。

新訳 星の王子さま

新訳 星の王子さま

星の王子さま―オリジナル版

星の王子さま―オリジナル版

星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

作品の核になっているのは人間に対する鋭い批評精神と人間の根源的な孤独意識のように感じましたが、一度読んで理解できてしまうような底の浅い作品ではなさそうです。
さて今日その最初の授業があったのですが、何と二人ともこの作品を読んだことがあるというのです。一人は英語で、もう一人はスペイン語で。そこで僕が「じゃあ今度は日本語で読んでみようか」と言うと、二人の反応は…
 「えー、あんまり読みたくない。ナニこれって感じで、何だかよくわからなかった。」
 「そうかなあ、王子さま、カワイイじゃん。」
…というわけで、やはり二人とも作品の表面的な理解にとどまっているようでした。もう一度じっくりと読んでみればきっと何かをつかみ、感じ取ってくれるに違いありません。
ところで、倉橋訳の「あとがき」の次の一節を僕は大変興味深く読みました。

そもそもこの王子さまは、パイロットの「私」がサハラ砂漠で不時着して、孤立無援のまま死に直面した状況で出現します。ということは、「私」が死を覚悟したときに自分の中に発見した「反大人の自分」、大人の世界とは対立する本物の自分である「子供」が、王子さまの姿をとって現れたということです。

なるほど、そういう解釈も成り立ちそうです。幸いいろいろな翻訳が出ているので、それらを参考にしながら、作品の本質に迫りたいと思います。もちろん、「大人」である生徒の読みも尊重しながら…