詩人、蕪村

萩原朔太郎の「郷愁の詩人 与謝蕪村」を読んだ。これは詩人による俳句論としてなかなか面白い。また、朔太郎が自らの詩において何を追い求めたのかを探る手がかりともなる。 今や蕪村の俳句は、改めてまた鑑賞され、新しくまた再批判されねばならない。僕の…

読んだ記録、読んだ記憶

このブログでは、本を読み終えたらその覚書として(かつて書いていた読書ノートの代わりとして)その本についての駄文をしたためる、ということを続けて来た。ごく少数ながらアクセスしてくれる人もいるし、何よりも自分のための読書記録として、やめるわけ…

年輪の温もり

冨田民人の詩集『中有(そら)の樹』を読んだ。 この詩集の読者は、まず自分が過去に連れていかれることを感じるだろう。作者が作品中に登場させるものたちの多くは、長い時間の堆積物としてそこにある、あるいは読者を過去へと誘うものとして存在する。 「…

詩の中の算術

俳句の中に「こうだから、こうだ」という因果関係を持ち込むことは、避けるべきだとされる。うっかりそういう句を作ってしまうと、「説明」だとか「理屈」だとか言われて、批判されるのが落ちだ。 詩についても、同じことが言えるのだということを、三好達治…

ヤクルト・スワローズ詩集

これが読みたくて、969円の出費。 神宮球場に、ビール飲みに行こうかなあ。

前橋文学散歩の下見

前橋は萩原朔太郎の生地。 電車を降りるとすぐに上毛かるたが出迎えてくれる。早くも文学散歩気分。 駅を出て、欅並木をずんずん進むと、広瀬川にぶつかる。 広瀬川に沿って整備されている「広瀬川詩(うた)の道」には、詩碑が点在する。 廣瀬川白く流れた…

絵を描く詩人

清宮質文(せいみやなおふみ)の作品に初めて触れたのは昨年、横須賀美術館でのことだった。作品の前で立ち止まらずにいられない不思議な魅力を感じたことが、記憶の片隅に残っていた。その作品展が水戸の茨城県近代美術館で開催中であると知り、観に行って…

カマイタチ

草野球に明け暮れていた小学生の頃の事件の一つである。 一塁を守っていた、僕より一つ年上のかっちゃんが、内野手からの送球を捕ろうと両手を高く差し出したが、球はそのすぐ上を通過してしまった。その直後である。球を後ろに逸らしたかっちゃんは、球の行…

読むべき本

昨日に引き続き、『書く力―私たちはこうして文章を磨いた(朝日新書)』について。 この本はたまたま書店で見つけて、中の数行を読んだだけで「これは読むべき本だ」と直感して購入したのだが、この直感は正しかったようだ。 竹内政明は文章修練のために、い…

詩と詩論

『西脇順三郎詩論集』を、黄金町のアートブックバザールにて¥500で購入。箱に入っていて状態が良ければ¥2,000位はするのだろうが、箱がなく汚れ気味なのでこの値段なのだろう。僕にはかえってありがたい。ちょっと読みかじって、すぐ投げ出してしまうかも…

歩行のように

詩についての小さなスケッチ (五柳叢書 101)作者: 小池昌代出版社/メーカー: 五柳書院発売日: 2014/12メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 今日、小池昌代の散文を読んでいて、自分の中に長年わだかまっていたモヤモヤが晴れたような気がした。 モヤ…

山の本棚

串田孫一の本はすべて山の本の棚にまとめてある。『山のパンセ』、『もう登らない山』など、山のエッセイ集や紀行文集などの中に、そうではない本も混ざっているが、串田孫一と言えば僕にとってはまず何よりも山の作家なので、その本は深田久弥や辻まこと等…

一級の教材

『夜のある町で』は荒川洋治が、好きなこと(もの)、いいと思ったこと(もの)について、くつろいだ調子で穏やかに語った文章を集めた楽しい本だ。ところが、宮澤賢治に対してはとても手厳しい。(それから「詩の朗読」も全く認めないのだが、そのことには…

ベストナイン

『現代詩手帖』なんて買ったの、ずいぶん久しぶり。 (本箱の中を見たら、1977年11月号「増頁特集=いま〈詩〉とはなにか」というのがあった。なんと30年以上も前のだ。なんでこんなところに、と思うところに線が引いてある。昔からやっていることは…

「八木重吉記念館」訪問

5月21日、八木重吉記念館を訪れた。 場所は町田市相原町、ここは僕がよく自転車で走る境川の源流近く、のどかな丘陵地帯で、この辺りから高尾山方面へ通じるハイキングコースもある。 「素朴な琴」と題された次の作品は八木の代表作の一つ。登美子夫人の…

小さな身震い

アーサー・ビナードの詩集については、前にも書いたことがあるけれど、こちらの方が第一詩集で、発行は2000年、中原中也賞を受賞している。生徒に読んでもらいたくて、図書室で購入してもらった。釣り上げては作者: アーサービナード,Arthur Binard出版社/メ…

学校の美術室

こんな本を持っていたことを思い出した。 本を持っているからといって、全部読んだとは限らない。二、三編読んで、こんなもんかと思って本棚にしまったような気がする。カバーの挿画がいいので、持っているだけで満足してしまったかもしれない。 RCサクセ…

「定型」というレール

アーサー・ビナードのエッセイを読んでいると、読み手を引き込むユーモラスな語り口とテンポの良さ、そしてとても気の効いた結びの一文にいつも感嘆する。そして、自転車のことがしばしば話題になるのが、僕にとっては興味深い。出世ミミズ (集英社文庫(日本…

ささやかな地異

浅間山噴火のニュースを昼過ぎてから知った。 そういえば、朝自転車に乗ろうとしたとき、サドルが少しざらついていたような。(こんな寒さの中でも、自転車通勤なのです。) 浅間山の噴火というと、立原道造の「はじめてのものに」という詩を思い出す。 ささ…

右か左か

左右の安全作者: アーサー・ビナード出版社/メーカー: 集英社発売日: 2007/10/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 一昨日、ラジオ番組に出演していたアーサー・ビナードの詩集。 おととしこれが出版されたとき、朝日新聞の書評欄に、これ…

前衛?伝統?

2008年に読んだ、これが最後の本。詩の力 (新潮文庫)作者: 吉本隆明出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/12/20メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (26件) を見る戦後の現代詩、短歌、俳句について、専門家でない読者向けにわかりや…

…たり…たり

「国語表現」の時間には、「休日は映画を観たり、買い物をして過ごしました。」のような文は、「休日は映画を観たり、買い物をしたりして過ごしました。」というふうに直すべし、と指導するのがお約束です。こういう場合の「たり」は単独で用いず、「…たり……

ときにはワケのわからんモノも…

1月15日の日記で北村太郎の『ぼくの現代詩入門 (1982年)』についてちょっと触れましたが、今amazonで調べてみてびっくりしてしまいました。今日現在amazonには一冊だけ出品されていますが(もちろん中古)、価格が8,000円もするんですよ。僕が…

ウソでもいいから「ハエタタキ」

前回の続き。 『短歌はじめました。』を読みながら、実にいろいろなことを考えました。 ああいたい。ほんまにいたい。めちゃいたい。冬にぶつけた私の小指(←足の)。 すず という歌をめぐっての、東直子、穂村弘、沢田康彦の三氏のやりとりなんですが、 東 …

自己を演じる

2学期の現代文の授業で取り上げた山口昌男の評論「遊び」(『気配の時代』所収)は、高校生に読ませる教材としては少々手強かったのですが、僕にはなかなか興味深い内容でした。気配の時代作者: 山口昌男出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 1990/04メディア:…

にぎやかな悲しみ

今日、仕事を終えて帰宅する時の出来事。 寒くて暗いホームで15分ほど待ってやっと来た電車に乗って、すぐに『続・北村太郎詩集 (現代詩文庫)』を開いて読み始め、ふと目を上げたときにはもう二駅も先まで乗り過ごしてしまっていたのでした。今の職場にな…

軽やかな詩

『荒地の恋』を読めば、今度は北村太郎の詩を読みたくなる。 あの、小説に描かれた波乱の後半生からどんな詩が生み出されたのか。 図書館に行って『荒地の恋』を返却し、替わりに『北村太郎詩集』(現代詩文庫61)、『続・北村太郎詩集』(現代詩文庫11…

荒地に実った果実

朝日新聞の書評を読んで、是非読みたいと思っていたねじめ正一の『荒地の恋』が、職場のすぐ近くの図書館の新刊コーナーに並んでいた。ラッキー! 北村太郎は、同じ詩人で親友の田村隆一の4人目の妻、明子と深い仲になったことを妻の治子に告白する。治子は…

荒川洋治を「なるほど」と思って読む。

詩とことば (ことばのために)作者: 荒川洋治出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2004/12/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (31件) を見る荒川洋治は詩のことばと散文を比べて、 散文は「異常な」ものである と言う。「え?」…

詩人の詩

(前回の清水哲男の話の続き) それでは、本業の詩の方はどうなのかと思って家の本棚を探したら、『詩の新世紀―24人の現代詩人による』というアンソロジーの中に、「林檎箱、その他。」と題する詩が載っていました。 最初の章には「午前零時」という題がつい…