短歌

短歌に励まされる

大岡信の『新折々のうた1』を読んでいて、こんな歌を見つけた。 大方の誤りたるは斯くのごと教へけらしと恥ぢて思ほゆ 植松寿樹 作者は中学校の国語の教師だという。同じような経験は僕にもある。大岡信は言う、「こういう教師に教わった生徒らは、言うまで…

歌人、中川一政

真鶴半島にある中川一政美術館を見てきました。 真鶴に行った本当の目的は、御林の中の遊歩道を歩くことだったのですが、先日の台風で倒木が道を塞いでしまったらしく、通行不可。そこで、予定を変更してゆっくりと絵を見て帰ることにしました。ところが、災…

教科書にいかが?

白楽駅近くの古本屋「Tweed Books」にて300円で購入した、アーサー・ビナード『空からきた魚』(集英社文庫)を読んだ。 空からきた魚 (集英社文庫) 作者: アーサー・ビナード 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2008/02/20 メディア: 文庫 クリック: 24回 こ…

「なると気分」

小説は君のためにある (ちくまプリマー新書) 作者: 藤谷治 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/09/06 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る 『小説は君のためにある』の中に、「文学」と呼べる文章と呼べない文章の違いについて説明した、…

花をもめでじ

『伊勢物語』第八十八段。 むかし、いと若きにはあらぬ、これかれ友だちども集りて、月を見て、それがなかにひとり、 おほかたは月をもめでじこれぞこの つもれば人の老いとなるもの この「月」を「花」に置き換えてみると、今の自分の気持ちと重なってきま…

「秋」は「飽き」?

今日は、『伊勢物語』第68段について。 むかし、男、和泉の国へ行きけり。住吉の郡、住吉の里、住吉の浜をゆくに、いとおもしろければ、おりゐつつゆく。或る人、「住吉の浜とよめ」といふ。 雁鳴きて菊の花さく秋はあれど 春のうみべに住吉の浜 とよめり…

よしや? あしや?

今年は(というより、残りの人生)古典をもっと読んで人並みの教養を身に着けよう、などと今更ながら思い立って、まずは『伊勢物語』を最初から少しずつ読んでいる。きっかけは、「芥川」を授業で取り上げるにあたって、前後の章段を読んでみたら思いのほか…

気楽に生きよ…

連日、神経のすり減る仕事で疲れているのに、土曜日も朝から出勤。昼食のカップラーメンを食べ終わり、気分転換のつもりで職員室の机の上の『現代の短歌―100人の名歌集(篠弘編著)』を開いてみたら、こんな歌が目に飛び込んでくる。いますこし気楽に生きよ…

無口な人の…

朝日新聞の俳壇・歌壇の欄を、丹念に読むことはないけれど、一応毎週さっと目を通している。特に☆の付いた共選作には自然に目が行く。 今回、歌壇で☆がついているのは松田梨子氏の中三の秋がゆっくり深まって無口な人の魅力に気付くという歌だけど、なんとこ…

沈黙

どのやうに語つてみても納得をさせるためには沈黙が要る 香川ヒサ 夏休みに入る前の最期の授業で、生徒に「今月の短歌」として紹介したのがこの歌だった。本当はこの季節にふさわしい、生徒の心が素直に共鳴してくれそうな歌を選ぼうとしていたのだが、あれ…

鈍行列車の旅+イチゴ狩り+文学散歩

千葉県の成東へイチゴ狩りに行ったのは、今日が二度目。ここは青春18切符を使った日帰りの旅をするのにちょうどよい場所なのだ。成東の駅から徒歩圏内にイチゴ園がたくさんあって、いかにも房総らしい田舎の景風景の中で、のんびりとした一日が過ごせる。 …

一羽くづれて

岩波新書の『折々のうた』を持ち歩いて「春のうた」の少しずつ読んでいる。今更ながら、これはいい本だなあと感心してしまう。選ばれた作品、その配列、簡にして要を得た解説、どの点をとっても配慮が行き届いている。 たとえば、若山牧水の 海鳥の風にさか…

歌の効用

『伊勢物語』の「筒井筒」の段は、古文の入門教材として最適だと思う。古人にとって和歌は求愛のツールだったという話を生徒は興味深く聴いてくれる。 「王朝貴族の男女は、歌のやり取りによってお互いの気持ちを確かめ、愛を深めていったんだよ。」 「じゃ…

繊細で冷徹な眼差し

吉川宏志集 (セレクション歌人)作者: 吉川宏志出版社/メーカー: 邑書林発売日: 2005/02/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見るあさがおが朝を選んで咲くほどの出会いと思う肩並べつつ 花水木の道があれよりも長くても…

本の題名

仕事で近くまで行ったので、横浜市立中央図書館へ寄って句集・歌集をそれぞれ2冊ずつ借り、鞄をずしんと重くして帰ってきた。石田響子『木の名前』 岸本尚毅『感謝』 『セレクション歌人32 吉川宏志集』 穂村弘『ラインマーカーズ』どの著者も僕とほぼ同…

杭としての短歌

詩集『セラフィタ氏』は横浜市立中央図書館の、個人句集の棚に(長谷川櫂や金子兜太らと並んで)置かれていた。なぜ?セラフィタ氏作者: 柴田千晶出版社/メーカー: 思潮社発売日: 2008/04/01メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (1件) を見…

「定型」というレール

アーサー・ビナードのエッセイを読んでいると、読み手を引き込むユーモラスな語り口とテンポの良さ、そしてとても気の効いた結びの一文にいつも感嘆する。そして、自転車のことがしばしば話題になるのが、僕にとっては興味深い。出世ミミズ (集英社文庫(日本…

思い出せないもどかしさ

こんなもんじゃ 山崎方代歌集作者: 山崎方代出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/06/26メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 33回この商品を含むブログ (9件) を見る ふるさとを捜しているとトンネルの穴の向うにちゃんとありたり トンネルというのは右左…

鎌倉の山崎方代

先日鎌倉の駅前の本屋にて購入した『もしもし山崎方代ですが』(かまくら春秋社)を、本日読了。 鎌倉へは鎌倉文学館で開催中の企画展「歌人たちの鎌倉」を観に行ったのですが、一番印象に残ったのは、晩年を鎌倉で過ごしたという山崎方代の作品でした。 山…

『俳句界1月号』を読んで(2)

職場の同僚Aさんが、短歌に興味があるならと言って、ご自身の歌の載っている歌誌『氷原』(07年11月号)を貸してくださいました。 知人の突然の死を契機に久しぶりに作って投稿したという作品からは、亡くなった知人と残された家族への深い愛情と共感が…

ときにはワケのわからんモノも…

1月15日の日記で北村太郎の『ぼくの現代詩入門 (1982年)』についてちょっと触れましたが、今amazonで調べてみてびっくりしてしまいました。今日現在amazonには一冊だけ出品されていますが(もちろん中古)、価格が8,000円もするんですよ。僕が…

なかなか遠くもあるかな

「現代文」の教科書に前田夕暮の 木に花咲き君わが妻とならむ日の四月なかなか遠くもあるかな が出てくるので、午後から有給休暇をとって「前田夕暮記念室」に行くことにしました。 すぐ近くまで行くバスが少ないので、1kmほど離れたバス停から水無川に沿…

ウソでもいいから「ハエタタキ」

前回の続き。 『短歌はじめました。』を読みながら、実にいろいろなことを考えました。 ああいたい。ほんまにいたい。めちゃいたい。冬にぶつけた私の小指(←足の)。 すず という歌をめぐっての、東直子、穂村弘、沢田康彦の三氏のやりとりなんですが、 東 …

短歌始めました。

短歌作りの参考になり、かつ読み物としても面白そうな本はないかと思っていたら、本屋の店頭でこんな本を見つけました。短歌はじめました。 百万人の短歌入門 (角川文庫ソフィア)作者: 穂村弘,東直子,沢田康彦出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/10/22メ…

『俳句界』1月号を読んで(1)

さあ、新学期。2年の現代文の授業は、まず短歌の鑑賞から。(最後には生徒たちにも短歌を作ってもらう予定ですが、その話はまた後日。) 教科書の「短歌十二首」の冒頭は正岡子規の次の歌です。 久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬか…

異色の「俳句入門」

『寺山修司の俳句入門』という書名を発見して、僕は一瞬目を疑いました。 「え?! あの寺山修司が俳句の入門書を書いていたのか…」 寺山修司といえば、 ラグビーの頬傷ほてる海見ては 便所より青空見えて啄木忌 わが夏帽どこまで転べども故郷 を残した俳人…

再び、田中雅仁先生のこと

今日オーケストラの練習の時、いつも並んでファゴットを吹いているM君が歌集『伽羅の香』(田中博子著)を持ってきて、貸してくれました。この本のことを「折々のうた」で知ったことは以前書きましたが、先週そのことをM君に話すと、さっそく買って読んで…

僕の場合二回で済めばいい方です

どうぞよろしくお願いします (マーブルブックス言ノ葉絵本)作者: 八二一,枡野浩一出版社/メーカー: マーブルトロン発売日: 2002/05メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る これも短歌だと言われれば、確かにそうだよな… 僕の選ん…

故田中雅仁先生のこと

今日の朝日の朝刊の「折々のうた」の横に「23日付「折々のうた」の田中博子さんの歌の解説で、「息子はヴァイオリニスト」とあるのは「息子はファゴット奏者」の誤りでした。」という訂正記事が載っていました。 僕はこの記事を見て、もしかしたらこのファゴ…