中島敦展

神奈川近代文学館で開催中の「中島敦展―魅せられた旅人の短い生涯」を観て来た。 「文芸ストレイドッグス」なるものの影響か、いつもより若い女の子が多いような気がした。会場に用意してあるワークシートに記入して売店で見せると、その文芸ストレイドッグ…

俳句総合誌に初めて投句したときのこと

ずいぶん前から、何かきっかけがあれば書こうと思っていたのだが… 僕が初めて俳句の総合誌に投句したのは2002年の秋。その当時刊行されていた「俳句朝日」という雑誌だ。その句は、 台風の目を棒で刺す予報官 というのである。ご存知の方も多いと思うが、中…

目の前にあるのは

池澤夏樹個人編集による『日本文学全集』の第29巻は、「近現代詩歌」。その中の俳句を拾い読みしている。俳句の選者は小澤實。明治、大正、昭和の俳人50人を選び、その代表句を5句選んで口語訳と解説を加えている。 この解説は文字数約180、大岡信の『折々…

短歌に励まされる

大岡信の『新折々のうた1』を読んでいて、こんな歌を見つけた。 大方の誤りたるは斯くのごと教へけらしと恥ぢて思ほゆ 植松寿樹 作者は中学校の国語の教師だという。同じような経験は僕にもある。大岡信は言う、「こういう教師に教わった生徒らは、言うまで…

太宰治と三島

何年か前、文学散歩の仲間と三島の街を歩いたことがある。桜川という川に沿って文学碑が立ち並んでいるところがあって、その時の写真を見ると、井上靖、大岡信、芭蕉、子規などの作品を彫った句碑、詩碑が多数立っていることがわかるが、その中に太宰治のは…

賑やかな葬列

素敵な句集をご紹介します。街同人の長岡悦子さんの『喝采の膝』。 喝采の膝 作者: 長岡悦子,経真珠美 出版社/メーカー: 金雀枝舎 発売日: 2019/09/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 空港出て揚雲雀目に痛きまで 飛行機の旅では、我々はしば…

歌人、中川一政

真鶴半島にある中川一政美術館を見てきました。 真鶴に行った本当の目的は、御林の中の遊歩道を歩くことだったのですが、先日の台風で倒木が道を塞いでしまったらしく、通行不可。そこで、予定を変更してゆっくりと絵を見て帰ることにしました。ところが、災…

文学者、シューマン

『音楽と音楽家』の読者は、いつのまにかメンデルスゾーンやショパンやリストらが生きていて、次々と名作を生み出している時代にタイムスリップしていることに気づくだろう。そして、批評家、文学者としてのシューマンに出会うことになる。そこには、評価の…

じわっと効き目?

倉阪鬼一郎『元気が出る俳句』読了。 元気が出る俳句 (幻冬舎新書) 作者: 倉阪鬼一郎 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/03/28 メディア: 新書 この商品を含むブログ (1件) を見る サプリメントの効用が信じられないのと同じで、飲んで(読んで)すぐ効…

演奏会のお知らせ

本番まで、あと一週間になりました。明日、最後の合奏練習です。 メユールはめったに生で聴けない曲です。ぜひ聴きにいらしてください!

アメリカの良心

ドキュメンタリー映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を観た。 アメリカの情報と言えば、トランプとその周辺の動きばかりが報道されて、地球はこの先大丈夫なのかと不安になるばかりだが、この映画を観て少し安心した。アメリカにも有名無名の…

岩波新書を代表する一冊

高階秀爾の『名画を見る眼』を、僕は岩波新書を代表する一冊である、と断言してしまおう。いやいや、偉そうに「代表する」なんて言えるほど僕は岩波新書をたくさん読んでいるわけではない。でも、これが名著であることは間違いないと思う。今年1月、このブ…

ゴッホを読む

僕がこれまで読んだ、「絵」について書かれた本の中では、これが一番面白かった。筆者の批評眼は鋭いし、語り口も読者を退屈させない。名エッセイとの評価もあるようだ。僕は古本屋で見つけた単行本を読んだのだが、今は文庫になっている。内容的に古びた部…

緊急出版!?

こんな本が「緊急出版」されたと知って、さっそく読んでみた。 どうする? どうなる? これからの「国語」教育: 大学入学共通テストと新学習指導要領をめぐる12の提言 作者: 紅野謙介 出版社/メーカー: 幻戯書房 発売日: 2019/07/24 メディア: 単行本 この商品…

文芸誌も黙ってはいない!

文芸誌が教育の特集をしている。それはそうだろう。文科省が打ち出した大学入試改革、高校の新学習指導要領の国語に関する部分に対して、文学軽視との批判が噴出している。国語教育関係者だけでなく、ブンゲイに関わるヒトたちとしても、黙ってはいられない…

詩の中の算術

俳句の中に「こうだから、こうだ」という因果関係を持ち込むことは、避けるべきだとされる。うっかりそういう句を作ってしまうと、「説明」だとか「理屈」だとか言われて、批判されるのが落ちだ。 詩についても、同じことが言えるのだということを、三好達治…

島尾文学と夢

島尾敏雄の『過ぎゆく時の中で』というエッセイ集が、本棚の中で眠っていた。昭和58年発行。たぶん教材研究のために買ったのだと思う。「横浜生まれ」という文章に印が付いている。「横浜出身の作家だよ~」とか言って、生徒の興味を惹こうとたくらんだのだ…

夢の手法

島尾敏雄の『夢の中での日常』を読んだ。買ったのは学生時代か、勤め始めてすぐの頃か。すっかり日焼けして、ページの奥の方まで色が変わってしまっている。最近は、そんな本を本棚から引っ張り出してきて読むことが多い。読むべき本は、新刊書店の棚よりも…

ヤクルト・スワローズ詩集

これが読みたくて、969円の出費。 神宮球場に、ビール飲みに行こうかなあ。

掘り出し物

俳人、石川桂郎の名前は知っていた。気に入った句を書き溜めてあるファイルの中に、 釣堀がこんなところに雨の旗 が見つかった。平井照敏編の『現代の俳句』の中にも取り上げられている俳人だ。この人が小説家として優れた作品を残していることは、『名短編…

中学生に読ませたい小説

教科書名短篇 - 少年時代 (中公文庫) 作者: 中央公論新社 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2016/04/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る これは中学校の国語の教科書に掲載された短編小説を集めた本。教科書に載るだけのことはあって、さす…

教室で読む短編小説

このところ、日本の短編小説を読むことが多い。 昨年度一年間、文学作品に親しんでもらうために短編小説を一編ずつ読んでいく、という授業を担当していた。その準備のために、いろいろな作品を読んだ。多くは国語の教科書に載っている作品だったが、初めて読…

はるもにあ合同句集

先週の釘ん句会には、「はるもにあ」所属で、3年ほど前に句集『風を孕め』を上梓された山口蜜柑さんが特別参加してくださいました。その山口さんにいただいた「十周年記念、はるもにあ合同句集」を読むのがこの一週間の通勤電車の中の楽しみでした。お気に…

リンゴの木には

最近、通勤電車の中でよく読むのは、吉田秀和。吉田秀和の著作は、音楽を聴く、あるいは絵を見るという行為をめぐる思索へと読者を誘う。 絵を見る、あるいは絵がわかる――この二つは同じことである――というのは、その画面を追体験しながら、再構成できること…

句集を持って公園へ

今日のように気持ちよく晴れた休日になると、外で陽を浴びながら体を動かしたいという気持ちが押さえきれませんが、一方では家でのんびりコーヒーを飲みながら読書を楽しみたいという思いもあり、このアンビバレンツ(?)な欲望を二つながらかなえるには、…

絵画と建築

(当然と言えばそうなのだが)ル・コルビュジェの展覧会が行われている今回ほど、建物としての国立西洋美術館の魅力に気づかされることはこれまでなかった。西洋美術館が目的地でないにしても、その前を通って都立美術館に行ったり、奏楽堂に行ったり、つま…

珈琲小説

豆大福と珈琲 (朝日文庫) 作者: 片岡義男 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2019/04/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 古本屋で探して読もうと思っていた片岡義男の『豆大福と珈琲』が、文庫になったのはありがたい。『珈琲が呼ぶ』が売…

定価は1500円(税別)

神保町の岩波ホールで映画『12か月の未来図』を見た日、ついでに古本屋街を冷かして歩いていたところ、山吹書房の店先のワゴン内に潜伏していた『坊城俊樹句集』を発見、300円にて捕獲。 一本の棒は蝮となり死ねり どの顎も鮭の顎して遡る 日銀の壁に凭れて…

表現の連鎖の面白さ

知ってる古文の知らない魅力 (講談社現代新書) 作者: 鈴木健一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/05/19 メディア: 新書 購入: 2人 クリック: 8回 この商品を含むブログ (12件) を見る 文学作品は、過去の作品表現の集積によって成り立っている。すぐれ…

教科書にいかが?

白楽駅近くの古本屋「Tweed Books」にて300円で購入した、アーサー・ビナード『空からきた魚』(集英社文庫)を読んだ。 空からきた魚 (集英社文庫) 作者: アーサー・ビナード 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2008/02/20 メディア: 文庫 クリック: 24回 こ…